抱きし大志

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援軍派遣が決定されたその日の内に光秀の元へ命令が届く。 それを確認し、光秀は戦支度を総員へ命令を下すと同時に明智秀満と斎藤利三を呼んだ。 呼ばれた室内は四畳半と狭い上に窓の一つもなく蝋燭が数本だけ立ち光の射し込む隙間もないものである。 「援軍の命が下されたようですね」 「うむ、徳川との間を上手く取り持つ難しい命だな」 そして部屋に足を踏み入れると光秀が中心に座して仄かに揺れる蝋燭の灯火に照らされており、この姿を見た二人は不意に背筋が凍るような感覚に陥る。 「よく来てくれた、座りなさい」 光秀は目の前に恐る恐る座る二人を見て、軽く喉を鳴らす。 「天下を我らの手中に納めるぞ」 突然の宣言に二人はリアクションすら取る余裕すらなく口をあんぐりと開けて停止する。 これを見て光秀は首を捻らせ不思議そうな顔をした。 「言い方が解りにくかったか?織田信長を討つ時が……」 「御待ちをッ!!御待ち下されッ!!」 わざわざ言い換える光秀に秀満は慌てて手を伸ばして言葉を止める。 「お主らには、前々から話しておったではないか。何をそんなに慌てるか」 「いやまぁ、そうでしたが……本気だったかというか」 「失礼致しました。覚悟はしてましたが本題が急すぎて驚いていました」 利三は冷静を装うが明らかに目が泳いでおり、秀満は言わずもがなである。 だが慌てながらも部屋の空気を全て吸い上げる勢いで深呼吸し改めて口を開く 「…………本当によろしいのですね?」 「恐れるな、我らの行動が永年の謳歌を創るのだ」 「……御意」 今一度の問い掛けにも光秀は迷う様子はない。そしてこれを見た二人も意を決して応じた。
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