抱きし大志

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光秀の号令の元、明智兵は次々と波打つが如くに本能寺に突入した。 そして警備中であった織田兵を出会い頭に切り捨てて本堂へと詰め寄って行く。 つい先日まで織田家として同じ戦友だった者もおり、殺した骸の中には見知った顔も少なくない。 「くっ、くく……曲者ォォッ!!敵襲であるぞぉぉッ!!」 刀を振って返り血を払う利三を始めとする明智兵に織田兵は顔を青くさせて叫びあげた。 だがそれと同時に隠密行動の意味を失った明智軍は次の段階に移行する。 「各々、火縄の使用を許可する!!放てぇい!!」 突入する利三を援護するべく、秀満は声を張り上げて指示を命じ塀の上に伏せていた鉄砲隊が一斉射撃を開始した。 更に外から数多の梯子が立て掛けられ、一万以上の軍勢が相手を威圧させるべく鬨の声を響き渡らせる。 この数多の発砲音と耳を刺す叫び声は眠っていた成利の耳にも入り、驚いて飛び上がるように起きた。 「何事!!いや、上様……上様は何処に!!」 状況が理解できない成利ではあるが、まず一番に信長の安否が気にかかって急ぎ寝屋に向かい走る。 そして走っている最中、塀の上から水色の地に染め抜きの桔梗紋の旗が姿を覗かしており、思わず口が開き視線が釘付けとなってしまう。 「水色桔梗紋ッ!?明智様……敵は明智日向守様というか!!」 敵が誰かを知った成利は目眩すら起きる程であるが、息を切らしどうにか信長が居る筈の寝屋に到着して戸を引き開く。 戸を開けると信長は寝衣のまま不動行光を握りしめ、謀叛を悟っている様子が窺えた。 「失礼仕ります!!謀叛で御座います!!」 「何れの者が起こした」 「敵は明智!!明智光秀で御座います!!」
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