抱きし大志

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信長は撃たれた脇腹を片手で押さえながら座り込み、ゆったりと煙管を取り出して銜える。 そして口で煙管を上下させながら露骨なアピールを始めた。 「……あの、何をされているので?」 この行動に光秀の表情は思わず引き攣ってしまうが、信長は知ったことかと煙管を勢いよく突き付ける。 「その火縄の火で構わんと言っておろう」 「……これがなければ信長様を撃てなくなるので勘弁して下され」 「器が小さいもんだな」 頑なに火を渡さない様子に信長は口を尖らして文句を垂らす。 だが、光秀は何より信長は謀叛に怒り狂うとばかり思っており、それよりも先に煙管の件に御立腹な姿に調子が狂ってしまう。 「そもそも、お前一人で何をしている。儂の首を取りに来たならもっと兵を持ってこんか」 「あの、この状況で説教なさるのですか?」 「お前は曲りなりにも大将であろう。一人のこのこと現れて返り討ちになったらどうする。残される者共が途方に暮れようが」 「……すみませぬ」 「敵に易々と謝るな!!」 挙句の果てに説教まで始まってしまい、更に困り果ててしまう。そしてそんな姿を見て光秀は恐る恐る口を開く。 「信長様、些か余裕が御座いますな」 「あるわけないだろ。撃たれてるんだぞ?血が止まらんぞ?お前もやるか?」 その質問に信長は火の無い煙管を投げつけて、詰るような目付きをぶつける。 また言葉通りに脇腹の出血は止まる気配を見せず、足元は血溜まりができており顔色も色白くなってしまっていた。 「……御見事で御座います、信長様」 常人なら伏っして泣きわめく程の負傷の上に、今まさに銃口を向けられる事態にも関わらず毅然としていると内心感服して小さく言葉を漏らす。
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