真の信は

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「旗指物ォ、挙げぇい!!」 「御意ッ!!」 織田軍が布陣する設楽ヶ原とは対せし東の方角、武田軍の本陣から旗が挙がる。 "疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山"と記るされた風林火山の旗指物。前の時代に勝頼が掲げられなかったそれが威風堂々と掲げられ、仰ぎし武田兵は歓喜歓声を挙げて鼓舞された。 「全軍ッ!!攻勢を開始せよォッ!!」 「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッッ!!!!」 そして武田軍総大将、武田四朗勝頼は携える名刀甲斐国江を力強く設楽ヶ原に向けて総攻撃の命令を発する。 この命に武田軍は咆哮を挙げて空気を振動させ、何よりも頼もしき様に勝頼は思わず口元が緩むと同時に興奮で鳥肌が立つ。 「さぁッ!!さぁさぁ、行くぞぉぉぅ野郎共ぉぉうッ!!我ら日ノ本最強、赤備は中央を突くぞぅ!!この山県昌景に続けぇいッ!!」 武田四天王の一人である山県昌景は、一番槍は誰にも渡さんと言わんばかりに我先に先頭を駆け、率いし武田軍精鋭部隊たる赤備は敗北の文字など一切として考える事無くそれに続く。 「カッカッカッ、儂らも山県に負けてられんなぁ。馬場は徳川に中るとするかね」 「天より御照覧くだされ晴信様。この高坂昌信、必ずや悲願を達成してみせます……高坂軍前進せよッ!!」 これに同じく四天王たる馬場信房は息巻く味方の姿に楽し気に笑い自身も兵を進め、高坂昌信も死した信玄に黙祷を捧げた後に動き出す。 武田家に於ける一世一代の大動員の大戦、織田家が徳川信康の謀反に毛利・四国諸侯という多くの敵を相手にしている今が最後の機だと信じて織田信忠が陣取る設楽ヶ原に突撃を開始した。 中央では信長が討たれたなどと夢にも思わないままに。
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