真の信は

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武田軍に迷いが無い。設楽ヶ原には堅牢な陣を構築されているにも関わらず、一切の迷いなく突撃してくる。 これを見た織田・徳川兵は何故に突撃を敢行できるのかと恐怖心に似た感覚に陥り、震えのあまりに手に持つ火縄銃を落ちそうにまでなってしまう。 「なっ……何でだ。何で武田の奴らは、こんな陣に向かって来れるんだ……」 「こっちの方が数が多いというに勢いが負け取るじゃないか」 「皆々、臆するでないぞッ!!銃口を下げずに顔も上げるのだッ!!」 敵の引き起こす地鳴りに体を震わせるが、家康が自ら兵に叫び奮起させる。 だが徳川軍の守る南陣から見える前方の靡く旗は花菱の家紋、不死身の鬼と評される馬場信房その者であった。 次いで中央陣には丹羽長秀、そして彼らの陣に迫るは山県昌景。 自他共に日ノ本最強を自負する赤備。彼らの着込む紅の具足は、日に照らされ強靭たる姿を示していた。 そして北陣は佐久間信盛、此処に状況把握に長けて常に激戦を掻い潜った退き弾正こと高坂昌信が突撃を敢行する。 「堪ぇい、堪ぇいッ!!敵を引き付けるのだ!!」 「来い……撃たれに来い武田の猪共……撃てば勝てるんだッ」 見る者を畏縮させる武田の突撃に、恐怖のあまりに織田・徳川兵は心臓の鼓動を早くさせる。 だが此方には大量の火縄銃という奥の手も備えており、第一陣だけでも千丁ものそれが火を吹くのだ。故に果敢な突撃など飛んで火に入る夏の虫なのだと信じながら。 しかし突撃する武田軍から特に突飛した少数の騎馬団が複数出てきており、誰もがそれに注目する。 そしてその騎馬団は後ろに木の束を曳きながら右へ左へと縦横無尽に走り回っていた。image=500402016.jpg
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