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長可と忠勝の二人は並んで昌景に突き進み、ほぼ同時に槍を振るった。
二人の携える槍は並々ならぬものではない。長可の槍は”人間の骨など無いも同然”といわれ鋭い切れ味をもつ大身の十文字槍、人間無骨。そして忠勝の槍は天下三名槍と称され矛先に当たった蜻蛉が切れたといわれる、蜻蛉切である。
双方とも日ノ本に名を轟かす一品であり、当たれば確実に具足ごと叩き切り殺せるのだ。
「扱う獲物が上質でも使い手がこれではなぁあッ!!」
長可は胸を一突きしてやろうと突き出すが、昌景は体を僅かにだけ逸らし人間骨の太刀打ちの部位を掴み取られて逆に引っ張られる。
引き戻そうにも自身の腕力だけでは力負けしてしまい、そのまま落とされそうになるも長可の跨る馬の百段が突如走り出し一時離脱を計った。
百段に助けられた。自慢の愛馬が誇れるものだと再認識したと同時に未熟さを痛いほど痛感して歯を食い縛る。
そしてほぼ同時に槍を振るった忠勝であるが、彼の一撃も届くことはなかった。
何故なら長可を去なしながら、昌景は槍を忠勝の馬に投げ付けて脳天を貫く。
犬槍が卑怯と言うなら勝手に吠えていろ。武士の所業など犬畜生、いくら取り繕うと人殺しの非道なる結果には何も変わらないのだから。
更に昌景の追撃は止まらない。
馬が前のめりに倒れだし忠勝の体制が崩れた機を逃さず、腰に携える刀を引き抜いて飛び込んできたのだ。
「テメェの首なんざ興味ねぇが、邪魔だ死ねぇッ!!」
馬を乗り捨ててまで昌景は勢いに任せ忠勝の身体を掴み引き摺り落とす。そして組み掛かって刀を降り下した。
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