4493人が本棚に入れています
本棚に追加
/761ページ
「邪魔だ三下ッ!!この山県三郎兵衛尉昌景を止めれる奴なんぞいんのかッ!?いねぇえだろうがッ!!」
昌景は更に馬を叩き速度を限界まで引き伸ばす。もはや彼を止めれる者など徳川軍では忠勝ぐらいしか居らず、束で懸かろうとも誰一人として阻止できずにいた。
そして多くの屍を道筋に転がしながら徳川本陣を目前に見据える。
「昌景様ッ!!あと少し……あと少しで徳川本陣で御座いますッ!!」
「いえェェやすぅぅぅううッ!!!!」
昌景を葵紋の陣幕を叩き切り、殺すべき名を叫びながら突入する。
だがその内部を見た誰もが眼を見開いて驚き歯を食い縛った。
「よく来てくれた、赤備の皆の衆」
そこには間違いなく家康が居た。しかし獲物の前には、ざっと見積もっても五十人はいよう兵が隊列を整え全員が鉄砲を構えていたのだ。
「美しく散って下され。美しき紅い華を」
そして興奮する家康は口角を引き上げながら突入してきた赤備に指を差して、同時に一斉射撃が開始された。
飛び放たれた数十発もの鉛弾は不安定な軌道を画きながら昌景を始めとする赤備たちを撃ち抜き、凶弾に為す統べなく悲痛の叫びが響く。
「二段目、放て」
更に家康の攻勢は続く。一斉射撃を終えた鉄砲隊の一列目と入れ替わり、二列目が構えられ透かさず放つ。
「三列目、放て」
二列目の一斉射撃で突入した赤備の全員が血を流し地に伏っする。
だが家康は姿を見ても尚、攻撃の手を一向として緩める事はせず三列目まで撃ち込んだ。
「一列目は再装填続け。他は抜刀し白兵戦に移行する」
「御意ッ!!」
一糸乱れず放たれた至近距離からの規格外の数の鉄砲により赤備は死屍累々となるが、続けざまに止めをさせと命ずる。
最初のコメントを投稿しよう!