真の信は

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「織田信忠が現れただとッ!?」 信忠が前線に到来。これに対して声を荒げ立ち上がる者が他にも居た。 それは武田本陣に構えていた総大将たる武田勝頼であり、彼は驚きのあまりに腰掛けていた床几を倒して戦況報告しに来た伝令兵に再度声を掛ける。 「はっ!!それに伴い各陣の攻勢を指揮している馬場様と高坂様より言付けを預かっていますッ!!」 「申せッ!!」 「敵の抑えに心配は無用ッ!!どうか討つべきものを御見据え下さいませッ!!」 言付けの内容に勝頼は眼を見開いて拳を固く握り締めた。 敵の数は我が武田軍に比べ圧倒的に多いなど今更言わずもがなである。だがそれを抑えてやると言い切る将たちの姿に采配を振り上げる。 「武田ッ、全軍ッ!!突撃を開始せよォォォッ!!この本陣も動かす、この勝頼に続けぇいッ!!」 「御意ッ!!」 そして勝頼自らも織田本隊に対抗すべく攻勢を仕掛ける旨を堂々と宣言する。 現状は織田軍も前進を開始したが、北陣及び中央陣を高坂軍と山県昌景の意思を継ぐ赤備が抑え、南陣は織田本隊と徳川本隊という数倍の敵にも関わらず馬場信房が抑えていた。 勇士たちの奮闘を無駄になどしたら自分は一生後悔する。だからこそ此所で一生一代の大勝負を賭けるのだ。 「その進軍っ、待つのだ四郎よ」 だがその決意に待ったをかけた者が現れ、声の先に視線を向けると武田一門衆たる穴山信君の姿があった。 そして彼は勝頼を引き留めるつもりで手勢まで引き連れて本陣に足を踏み入れてる。 「何度でも言おうぞ。例え前線の兵を見捨てようとも進軍は辞めるのだ」 「……お前は何を言っている……何を言っている穴山信君ぃッ!!」
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