集え勇士よ

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家康との約定を交わした信忠はすぐさまに自陣に戻る。 またそこには前もって集められた織田兵が突然の撤収準備命令に首を傾げて居並んでいた。 「凱旋だというのに随分と急に帰るんだな」 「戦が終わったばかりで休む暇もくれないなんて上方はよっぽどの事があったのか?」 「よっぽどな事……よもや羽柴様が敗れたか?」 「静まれぇいッ!!信忠様が御見えで御座るッ!!」 織田兵は疲れのあまりにぼやく者も少なくなかったが、信忠の姿に慌てて姿勢を整える。 そして全体を見通せるほどの小高い丘に昇る彼を見上げ、皆々はその姿を視界に映しながら何の集結なのかと息を呑む。 「諸君ッ!!我が父……今より二日前、織田信長が明智光秀の手に掛かり死んだッ!!」 信忠は包み隠さずに堂々と信長の死を発表し、これを聞いた織田兵の誰もが動揺によりざわめく。 「一度、京に戻り逆賊を討つッ!!だが、しかしッ!!皆の知る通りに明智は天に轟く戦上手、勝てる確信などありはしないッ!!」 光秀が長年に渡り功を重ねた事は織田内では周知の事実であり、敵の数といった現状もまったく見えない。 不安を抱えるなという方が無理である。 「どうだ、臆したかッ!?今なら逃げる奴に責は問わんから逃げるがいいッ!!だが、残る者には安土に戻ったら蔵を全て開けて褒美は望むがままにしてやるッ!!その戦に功を挙げればそいつに恩を一生忘れぬッ!!」 だがしかし、逆にいえば家臣にとっても此所で功を挙げずに何時挙げるか。 如何に身分が低かろうと大立身成り得る最大の好機であるのだ。 「そして約束してやるッ!!共に血を流す覚悟ある者には決して後悔させんッ!!今、日ノ本に生きる者の誰も見るに叶わなかった泰平の世を見せてやるッ!!」 「うっおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!」 「中部大返しだァァッ!!」
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