集え勇士よ

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連合軍は信康の居る岡崎城へ兵を進める。 そして徳川軍一万人の軍勢は瞬く間にそれを包囲、この状況で家康が手勢を率い入城した。 「家康様ッ!!信康様は……信康様は我らが余計な事を言ってしまったばかりに事を起してしまわれただけで御座いますッ!!何卒、信康様の御命だけはお許しを」 「若様はあの方なりに徳川家の為に行動されたのです!!どうか責は我らに!!」 岡崎城内では家康に縋るように多くの将兵が信康の命だけはと懇願するが、一切として眼を向ける事無く本丸まで歩き続ける。 この後も岡崎城の者の処遇だけでなく、織田の件や切り取った武田領の差配があり無駄な時間を取ろうともしない。 そして本丸に入ると白装束を着込んだ信康がただ一人だけ座しており、姿を見て家康は迷わず刀を抜く。事の重さを理解しているのなら結構だと冷ややかな視線を送りながら。 「父上……某は自分なりに徳川家を思い行動致しました……何が悪かったのでしょうか」 信康は思わず心の弱さを見せながら、下唇を噛み涙を溜めて腹を切る為の脇差しを抜く。 「だろうな、前を歩んだとしても見ているのは足元だけだ。自分の歩みしか見えぬ奴になにができるか」 「……独りよがりですか」 苦言を噛み締めて脇差しの先を腹にいれる。一瞬だけ痛みに手が止まるが勢いに任せて目を瞑り更に差し込む。 この腹を切る息子の姿に躊躇する事なく首筋に刀を降り下ろして謀叛の処遇を迅速に終えさせた。 「少なくともお前の行動は徳川が天下を取る最初にして最後やもしれぬ機会を壊した……この光秀の文も塵に成り下がったか」 そして家康は懐から一通の書状を取り出し、蝋燭の火に焼べて消し炭を棄てた。
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