集え勇士よ

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「その数、凡そ三万五千ッ!!全軍を差し向けて来ていますッ!!」 「なんとっ!?」 このタイミングで毛利軍が動き出したという事に羽柴家臣の誰もが驚愕し眼を見開く。 備中高松城戦は前の時代と同じく、羽柴軍が水攻めで城を包囲して毛利本隊が手を拱くという状態であった。 だが光秀謀叛の報告と同時に毛利軍も動き出した。つまり密書なりと何らかの理由で露呈してしまったという事だと暗に示す。 「羽柴様ッ!!御下知をッ!!」 「すぐに指示を下されッ!!敵を迎え討たなければッ!!」 兎にも角にも向かってくる敵は何とかしなければならない。しかし肝心の秀吉がこの様であり、家臣たちは血の気が引いてゆく。 「下知……?そうだ、自分は信長様から御下知を頂いている……守らなくては……」 上の空の秀吉であったが、不意に頭の中にある人物の名が過った。 そしてゆっくりと立ち上がり謀叛を伝えた兵に詰め寄る。 「……信忠様……信忠様は御無事であるかっ」 「はっ!!若様は東海道に居りますッ!!」 耳に入った言葉に秀吉は拳を握る。そして落としていた視線を真っ直ぐと前に向き直し采配を振り上げた。 「この羽柴秀吉の名に於いて下知を与える!!迫る毛利軍を撃退し、返す刀で織田家の敵である光秀を討つ!!」 「っう!!それは……」 「官兵衛!!君の言いたいことはわかる、だが我が主は信長様……そして信忠様だッ!!」 秀吉は自身の敵とではなく、あくまでも織田家の敵と明言した。 これは秀吉には信長が創りかけていた天下を奪うのではなく、あくまでも信忠の為に光秀を討つという意味合いを持つ。 そして羽柴軍は毛利軍を迎え討つべく行動を開始するのであった。
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