集え勇士よ

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自ら具足を着込みむ松姫と濃姫、そして完全武装の侍女に威圧されて藤孝は思わず後ずさりしてしまう。だが二人は追い打ちを掛けるように歩み迫って口を開く。 「何をしているのですか、細川殿?籠城の支度は終わったのですか?」 濃姫の言葉に冷や汗が流れる。本気で戦う気なのかと。 「恐れながら申し上げます。現状の安土城は二千名しか兵がおらず、現兵力では御二人に危険が……」 「茶筅丸と三七、それと坊丸に書状を書きました。これで彼らを城に呼びなさい」 「ほっ、本気で御座いますか」 藤孝はあくまでも退去を促すが、話を遮られる挙句に三人の息子に出陣を促す内容の書状を取り出され困り果てる。 幾ら息子といえど、十中八九明智軍が攻める死地といってしまっても過言でない安土城に来る確証がなく援軍無き籠城になるやも知れない。 「藤孝殿。松は戦の事は疎いのですが、此処が無くなるというのは戦略云々の前に人の心が崩れると思いますの」 次いで松姫の言葉に一理あると思ってしまい息を呑む。安土城は織田家を象徴する城であり、かの城が落ちるは衰退を諸侯に感じさせてしまい更なる蜂起されるやも知れない。 何より此処を突破されるは、続いて岐阜まで攻勢に晒される恐れもある。 「どうか信忠様の帰る場所を一緒に守ってくれませぬか」 迷った藤孝に畳みかけるように松姫は膝をついて頭まで下げだし、主君の正室に何て事をさせてしまったと慌てふためく。 「なっな、判りました!!織田家の為にこの身を捧げさせて頂きますッ!!なので頭を下げるなどおやめ下されッ!!」 「……言質、しっかりと頂きましたの」 慌てた藤孝は松姫を起き上がらせると満面の笑みを浮かべた表情が映る。これを見て相手は、かの武田信玄の娘だというのを忘れて侮ってしてやられたと再び頭を抱えた。
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