集え勇士よ

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安土城に集った織田兵は総勢九千ものは居り、その中には織田兄弟の他に蒲生氏郷や野々村正成、不破光治、更に美濃三人衆も馳せ参じ、可児才蔵と前田利家は明智兵の首を抱えながら現れていた。 総大将は濃姫、陣頭指揮に藤孝であり二人が即席の軍勢を纏め上げる。ただ信意と信孝はこの人選に不服を漏らす。 「御待ち下され、義母上。総大将はともかく指揮権はこの信意に下され」 「はぁッ!?黙れ茶筅が!!指揮はこの信孝にこの相応しぃぃッ!!」 「うっざ、うっざぁ!!三七がうっざぅあぁぁッ!!」 そして意見が衝突した二人は再び殴り合う。だが流石に見かねた濃姫は彼らの目の前に薙刀を突き立てて止め、更に髪を鷲掴み大きく振って勢いよく互いの頭をぶつけさせる。 突然の濃姫からの暴力に二人は唖然としてしまい、驚きと恐れのあまりにその場に座り込んでしまう。 「茶筅丸、三七。そろそろ喧嘩はやめなさい、これ以上口喧嘩するなら舌を切るわよ。殴り合うなら肩から削ぎ落とすわよ」 「……ゴメンナサイ」 今は危急存亡の秋。故に無駄に内部の諍いに指揮系統を乱す事など下らない事この上なく、外様ではあるが指揮権は経験、知識、人望の全てを兼ね備えている藤孝の他なかった。 濃姫による本気の怒りを目の当たりにしたの信意と信孝は身を小さくして小刻みに頷き続け萎縮する。 ともあれ信長が考案した堅牢な安土城に兵力、備蓄、有能なる将。これらが揃った彼らは更なる防備を固め、来襲した明智軍を悉く撃退して五日間もの防衛に成功させる。 そして防衛戦が六日目の朝方に入った時、事態は大きく動き出す。東の織田軍がとある光景を眼にして濃姫の元に駆け込んでいたのだった。 「申し上げますッ!!東の方角より織田木瓜の旗を掲げる軍勢、凡そ三万以上ッ!!織田信忠様が帰ってこられましたッ!!」 織田家主君、織田信忠。満を持して安土城の戦線に到着したのである。
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