集え勇士よ

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信忠が軍評定を開く間に入ると、其処には既に織田家臣が集まっており入室と共に頭を下げる。 「御待ちしておりました。望月殿が集めて下さった情報を纏めさせております」 「陣頭の件と含め御苦労である、藤孝」 「勿体なき御言葉で」 「クッハハハ、謙虚なものよ。皆々もよくやってくれた。安土城の健在は明智を京に押し込める最良の一手であったぞ」 藤孝は全指揮を担い、混乱を極めて空中分解寸前であった織田軍を統括して見事に安土城を守って魅せた。そんな姿に頼れるものだと肩を叩き、居並ぶ家臣たちにも眼を配り労いの言葉を送った。 だがそんな姿を見た信意と信孝は前に出て、互いに足を踏んで見えないように後ろでド突き合いながら競うよう出てくる。 「兄上~。この信意は三七なんぞより働きましたぞ」 「何をいうか、茶筅めッ!!何なら今やり合うかッ!!」 またしても功を焦るあまりに周りが見えなくなって喧嘩を始めてしまう二人に家臣は困り果ててしまう。家臣も亡き信長の子だという事もありどうしたものかと冷ややかな視線を送るが、信忠は静かに歩きだし間に立った。 「二人とも……黙れ。それは今、必要か?」 信忠の言葉に二人は背筋が凍るような感覚に陥り、思わず殴り合っていた手を振り上げて動きを止め、その眼付きや口調は誰もが亡き信長の姿を想起して息を呑む。 正直言って家臣は皆、下らない兄弟喧嘩が理由で織田家が分裂する事も危惧していたが、数多の鬼門を罷り通って来た信忠はもはや並みの者ではない。 この毅然たる姿は家臣たちにも安心感を与え、信長亡き後も信忠が健在であり織田家に落日はないという事を威風堂々と体現してみせた。
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