集え勇士よ

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瀬田川突破はどう考えても織田側にとって不利である。馬鹿正直に正面から当たるのは避けたいものであった。 「大和に入り瀬田川を迂回するのはいかぬのか?」 「そうしたいのは山々ですが、筒井家が街道を封鎖し織田軍と明智軍の双方を拒んでいるようで」 佐久間信盛が南に兵を廻して別方面から攻められないかと疑問を口にするが、藤孝が再び首を横に振る。 近江の南に位置する大和の国を治めるは、織田家臣の筒井家であった。だがしかし本能寺の変を境に大和の入り口を全て封鎖してしまい、織田兵も明智兵もどちらも関係なく通そうとしていないとの事だったのだ。 「この後に及んで中立のつもりか」 「かといって筒井の大和郡山城は堅牢なものです。敵に廻してしまえば逆に包囲される危険性が御座います」 「ならば監視の兵を置きつつ調略するしかあるまいか」 筒井家主君である筒井順慶にとって光秀は信長の傘下に入る際の仲介者という恩人であり縁戚関係でもある為に繋がりも深い。故に無理に強行すると無し崩れに明智側へ流れる恐れがあった。 「それにしても時間稼ぎか……やはり毛利家辺りに援軍を要請しているのか」 「その考えも少なくないかと」 明智軍の動きには明確な意図を感じ取れた。そしてこの状況での時間稼ぎは、反織田家の勢力や離反する者を待つのが理由だと考えられる。 西には毛利家や三好家と戦の真っ最中であり、東も武田家は手負いとはいえ牙は折れておらず上杉家もどう動くか解からない。 さらに浅井家と朝倉家も織田派と明智派で二分する始末であり、通り道を潰された北陸道方面軍の柴田軍も易々と京に向かえなかった。 故に不利は承知でも早急な瀬田川突破を果たしたかったのである。
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