集え勇士よ

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処変わって大和の国。 中立を表した筒井家であるが、居城である大和郡山城では筒井家臣が大勢揃い頭を悩ませていた。 「本気でこのまま中立するおつもりか!?今まさに目と鼻の先で織田軍と明智軍が戦を行おうとしているのですぞ!!」 「簡単に言うでない!!天下分け目の戦いだからこそ慎重に事を運ぶのだ!!」 「だからこそいち早く参戦して功を得なければ!!」 その城内では、日和見か参戦するにしても何方に付くかと喉を枯らす勢いで数多の意見が叫び響き渡っていた。しかも家内では意見が、ものの見事に割れてしまっており前の時代と同じように右往左往してしまう。 「順慶様は何処か!!」 「殿は未だ寝屋に籠られておられる……これでは出撃準備か籠城準備かどちらを優先すべきかもままならぬな」 筒井家臣は思わず溜息を吐いてしまう。何故なら肝心の主君たる順慶が本能寺の報告を聞いてから自室に引き籠ったままであり、現状とっている大和の街道封鎖もそれ以上の事ができないだけでもあったのだ。 そして家臣に心配される順慶は、一人で広げている書状を穴が開くように見つめていた。 「光秀殿……本当にこのままでよいのだろうか」 見ている書状の内容は光秀からのものであり、明智家に味方しないかというもので思念の渦に叩き込まれ頭の中であれやこれやと包まれる。 更にその書状の一文には、味方になれば格別の褒美を。しかし中立であり尚且つ織田家にも加担しないとあればそれだけで報酬は支払うとも書かれてある為に一層として瀬田川でのどちらかに加勢するか否かで心が波打つ。 「当然だが織田には御恩がある……しかし明智殿がいたからこその朝倉軍に加担した際に許された……己は何と醜き心の弱さなのか」 順慶は頭を悩ませ歯を喰いしばる。無常に何もしない時だけが過ぎながら。
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