集え勇士よ

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信忠が安土城に到着した二日後、瀬田川を挟んで織田軍四万と明智軍二万五千がこの手に勝利を。そして天下を掴むべく対峙していた。 数の上では大きく勝っている織田軍ではあるものの、その内の信忠が長篠に率いた三万は、荷物を全て投棄して岐阜城まで休む事無く走破するという離れ業を為したせいで体力が回復し切っていない者も大勢いる。 また信忠は話に聞いてはいたが、明智軍が川の向こう岸に築いた陣を直接見て堅牢さを改めて実感した。 川を渡るための橋は瀬田大橋のみで限られており、集中攻撃を受ける事は誰の眼にも明らかである。そして川に入って直接乗り込もうにも櫓が立ち並び土塁が積み重なって簡単にはいかない。 しかしいち早く上洛せねば諸国に弱みを見せる事となり明智側へ靡く者もでてくる恐れもあるので強行する他なかった。 「光秀め……この地を決戦場として誘い込んだか」 思わず舌を打ってしまう。しかし目の前に明智本隊と光秀本人が居るのは事実であり為に逃す手はない。 信忠は腰に携える刀をゆっくりと引き抜く。家督相続の折に信長から直接賜った宗三左文字を。 この刀は信長が天下を治めんとした今川義元から受け継いだ一振り、そして自身も天下を目指しこの世の腐敗に覇を唱えんとした意志を受け継いだ。此処で絶やす事など決してさせはしない。 「織田家主君たる、この織田左近衛権中将信忠が名に於いて命ずるッ!!世を乱さんとする逆賊を討ち破るッ!!」 「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!応ぅッ!!応ぅッ!!応ぅぅッッ!!!!」 「織田軍、前進せよぉッ!!!!」 そして天に響かん、日ノ本の隅々に届かんと攻撃命令を発し、これに応える織田軍は負けじと叫び挙げて地を揺らし前進を開始した。
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