夢は儚く

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瀬田川、この地に織田軍四万と明智軍二万五千が互いに殺し合うべく衝突していた。 ある者は殺す相手の顔も知らぬ。またある者は知人親族に関わらず殺し合う。 武功の為、名を轟かせる為、家族の為、ただ今日の飯を食い繋ぐ為、仰ぐべき主君の為。戦う理由など人によって千差万別である。 しかし敵味方関わらず皆揃って自分の中に一つの事柄を携える。己の何かを変えて魅せると。 「よいかァッ!!この天下の一戦にて信忠様は、我ら蒲生勢に誉れある先陣を申し付けて下さったッ!!」 「応ッ!!」 そして織田軍の先頭に立つは蒲生氏郷。彼は大身槍を振りかざして兵に鼓舞する。 「この氏郷は難しい事など言わんッ!!自身も皆も出来る事だけを言うッ!!」 「応ッ!!」 「蒲生軍、吶喊ッ!!」 「うおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」 馬を足で叩いて自ら先頭を駆け、蒲生軍の兵たちもそれに続いて瀬田大橋に向かって行く。 将自ら駆ける勇猛果敢な氏郷の姿に兵の士気が大きく跳ね上がり突き進み、明智兵が数多の火縄銃を照準を合わせる橋に吶喊する。 「おいッ!!種子島くるぞ、楯だッ!!」 氏郷の言葉に反応して駆けながら立ち止まる事無く楯を構える。そんな行動など走り難い事この上なく普通なら隊列は乱れてしまうのは必定である。 だが蒲生軍は良くも悪くも突撃至上主義であり、何時如何なる時も完璧な突撃をする為に飽くなき鍛錬が功を奏していた。 そして火縄銃の迎撃を防いだ氏郷は再び飛び出して、大身槍を軽々と振り回し明智兵の首を吹き飛ばし一番槍の称号を昂然と知らしめる。
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