夢は儚く

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瀬田大橋に突き進んだ蒲生勢ではあるが、明智軍の対応も迅速であった。 「動ずる事なかれ!!鉄砲隊は左右に広く展開して橋を渡る敵の横っ腹を撃ち抜け!!次いで槍衾で押し込めい!!」 「応ッ!!」 瀬田大橋の守備に就いた秀満は、勢いに任せた突撃など冷静な対応を以ってすれば問題ないと言わんばかりに易々と止めてみせる。 だがこの突撃により織田軍全体の士気が上がった事は曲げようのない事実であり、此処からが真価の問われる時だと息を呑む。 「秀満様ッ!!織田先陣が川に入ってきましたッ!!」 「渡河中の敵に気圧されて勝手に撃つでないぞ!!川の中腹辺りにまで寄せろ!!」 織田兵は川の流される事などに怯まずに次々と足を踏み入れる。だが渡河中は近接攻撃など当然できない上に弓を構える事も儘ならない。そして火縄銃は濡らしたら使えなくなるし足もとられる。 いわば如何に精強な織田軍とて目の前の敵は単なる的。 「放てぇい!!」 次々と放たれる明智兵の銃撃は織田兵の血肉を砕いて殺し、川は紅く染められ人であったモノが底に沈む。 この一斉射撃に臆し狼狽する織田兵も多く現れ、思わず逃げ出そうとする者も出てきてしまう。だが後ろには多くの味方が背を押し合っており、更に退くに退けず寧ろ進軍が停滞してしまう箇所が見える。 突き進むしかない彼らは、死んだ友に脚をとられてるが自身もその仲間入りしない為にも踏みつぶして押し進む。 「っう……あの櫓が何とかならんか!!火矢でも炮烙玉でも何でもいい!!」 だが明智軍が普請した数多くの櫓が曲者であった。敵が前だけであるのなら攻撃を防ぐ手段は取り易いも、上からの攻撃は如何せん対応が難しく甚大な被害を被ってしまう。
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