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櫓が倒れる光景に秀満は小さく溜息を吐き出して采配を叩く。
「少し早いが、例の算段を行う!!堤防を破壊する合図の狼煙を挙げろ!!」
指示を出して狼煙が挙がったと同時に、川を渡っていた織田兵はすぐ異変に気が付いた。
始めは川の水位が膝回りまでだったのだが見る見るうちに上がっていっており、気が付いたら腰辺りまで濡れてしまい流れも速くなっている。
「上流で水を堰き止めていた堤防でも壊したか?」
「この程度なら押し進めれる!!倒壊した櫓に昇れば問題ない!!」
かといって流されるほどの水流でもなく織田兵は再び渡河を行おうとしたが、上流から響くような音が耳に入り動きが足が止まる。
そして視線を向けると多数の丸太が流れて迫って来ており、この光景に唖然として思わず思考が止まってしまう。
「逃げろォォッ!!」
逃げ場などありはしない。渡河していた織田兵は次々と丸太に薙ぎ払われ、更に橋代わりにしていた櫓にも激突して川にあった人に物は次々と押し流される。
「不味いこのままでは……!!」
「伝令ッ!!信忠様より直接の伝令で御座いますッ!!」
氏郷は思わず心の中で事態の巻き返しは不可能だと考えが過ぎってしまう。そしてつい止まって自身の足を見て歯を喰いしばる。
だが例え自身が死のうとも橋を渡り切れば士気だけでも再び盛り返すやも知れないと意を決したが、信忠かの伝令兵が矢玉を掻い潜って現れる事により手が止まった。
「信忠様が先陣の撤退を許可致しましたッ!!責を問うつもりはない故、堂々と帰陣せよとの由ッ!!」
「なっ……わかった。退こう」
信忠には虚仮威しの強さなど御見通しだったかと。そしてわざわざ落とし処を付けてくれた事に内心感謝して撤退指示をだした。
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