夢は儚く

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緒戦を終えたその日の夜、筒井家の大和郡山城で衝撃が走る。 そして筒井順慶は肩を震わせて感情を露にしており、現実逃避に飲んでいた酒杯を落としてしまう。 「もう一度申せ……もう一度申せぇい!!」 「松倉重信様が明智軍を手引きして城から討って出てしまいましたぁッ!!」 「ぬぅぅッ!!手は出すなと言うに勝手な真似ォッ!!」 順慶に告げられた内容は、自身の重臣が許可を得ずに明智軍を密かに通して出陣したというものであったのだ。 中立を崩したくなかった彼は、頭を抱えて苦悩し叫ぶあまりに口から魂すら飛び出す気までする。 「大和を通った軍勢の規模はわかるかッ!!」 「はっ!!強行された関所の者の話によれば、松倉様の手勢を合わせて五千ほどだと思われますッ!!」 五千との規模ともなれば、信忠から見れば完全に明智側に付いたと考えられて当然である。 しかし、明智側は未だに足場が安定しない為に安んじて全てを投じるには不安要素があまりに多すぎてしまう。 「もう行動する他ないか……すぐに藤松を筒井城に移せッ!!そして藤松派として徒党を組み上げてすぐに信忠様へ書状を送れッ!!」 「藤松様を織田側に付かせるのですか!?」 「私は明智側に付くッ!!これでどちらか一方が処断されようとも筒井家の名は残るッ!!だが間違ってもこれ以上に兵を出してどちらかに加担するのは許さぬぞッ!!」 やむ終えず決断に迫られた順慶は、あえて筒井家を二分させて義息の藤松を織田側に味方させる命を出す。 そして明智側には自身が引き受け、片方が死んでしまっても家名を重んじた決断をした。
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