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長可は押し倒された状態で左手掌は脇差が突き刺さっている。左腕を少しでも動かしたら刃が肉に食い込んで激痛が響き改めて刺されたと実感した。
「痛っぅぅッ!?むぅうぐぅぅぅッ!!」
残った右腕でこの事態を打開しようと利三の首を鷲掴み、そのまま全ての力を振り絞って締め付ける。
これは眉を顰めるが、次の機会などやらんと言わんばかりに刀を引き抜いて殺さんとする動きを見せた。
だがその刹那、利三の後ろにとある姿が眼に映り口を開く。
「……っァあ……ひゃ、百段ンンッ!!」
「この馬ッ、本当に聡い奴めッ!!」
利三は後ろに視線をやると百段が前足を上げて蹴り付けようとしており、振り返り際に刀で払い切った。
百段は大きな嘶きと共に倒れ、長可は悔しさのあまり歯を喰い縛ると同時に痛みなど忘れて突き刺さっている脇差を引き抜く。
勢いよく引き抜いた弊害に血肉は宙に舞うが、そんなものは然したる問題でないと眼にもくれず利三の首の付け根に差し返したのだ。
「ぐぶぉッ!?この……餓鬼ィ」
利三の首元の出血は止まらずに口や鼻からも逆流して血を吐き出す。引き抜けば出血死に至りほっといても何れ死ぬ傷ほどだと見てとれるほどだ。
だが、これで終いだと思うも二本の足でしっかりと立ち、刀を構え直して戦意を衰えさせる気配など微塵も見せずに長可を驚愕させる。
「利三……貴様、何故に天下の逆賊にそこまで尽くせるかッ!!」
「判るまい……判るまい、ただ欲に囚われ大志を持たぬ者たちには判るまいッ!!日ノ本を変える大志を持つ光秀様の御心はッ!!」
この言葉に長可の眉間に深い皺が刻み込まれる。
「大志だァ?んなもんに上様とて持ち合わせていただろうがッ!!」
そして長可も刀を引き抜き感情を露にした。
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