夢は儚く

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二人は目の前の相手を殺さんと刀を交える。 信長とて大志を持っている?そんな事は百も承知であるが、だからこそ謀叛という最後の手段を行わざる得なかったのだ。 互いに自身こそが正義であると信じているから殺らなければいけなかった。互いの抱く大志が真逆であるかこそなのだ。 そして利三は心から信じている。光秀の志すそれが日ノ本千年以上に及ぶ戦の歴史を変え、次ぐ世代には千年永年に及ぶ新しき世を創ってくれると思わせてくれる実力があり、魅力があり、覚悟がある。 信長を越える者だと今でも信じているのだから、自身は再び刀を振れるのだ。 「餓鬼よッ!!武力良し、気概良し、覚悟良しッ!!然れども未だに未熟なりッッ!!!!」 利三の突きが長可の右肩を抉る。次いですぐさま引き抜いて再び振り上げ止めの追撃を落とす。 「この長可ぃをなぁぁッめェェぇるぅうなァァアッッ!!!!」  だが長可とて死ぬ気など微塵もない。穿たれた右肩から血を流しながら力を込めて刀を振り迫るの一撃と衝突しあう。 そしてこの衝突で二人の思わぬ事態が起こった。利三の刀身が鈍い音を響かせて折れたのであったのだ。 利三は折れた刀身が眼前で宙に舞っており我が目を疑うと同時に思い出す。折られた箇所は本能寺の折に森成利が名刀たる不動行光にて打ち合わせた処であり、そこが脆くなってしまったのかと到底信じられない光景に一滴の冷や汗を流しながら。 「地獄で上様と弟たちに詫びろォッ!!」 長可の一閃が入る。利三の首に刃が食い込んでゆき、痛みを感じる前に振り抜かれて切り捨てた。 「敵将ぅ……敵将、斎藤利三ッ!!この森可成が次男ッ、森勝蔵長可が討ち取ったりぃぃぃッ!!!!」 そして勝利の咆哮を高らかに吠え挙げて、その場に倒れ込んだ。
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