夢は儚く

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利三が討ち取られたと同じ頃、明智本陣でも動きがおこる。 北・南からの織田陣襲撃は途中段階であり、次いで明智軍本隊が中央突破するという三方からの包囲攻撃が本命であったのだが、本隊出陣の間近で先陣として命じられていた明智秀満が突然呼ばれていたのであった。 既に戦が始まっているというのに呼び出された秀満は焦りを感じながら光秀の居る帷幕に足を運び、中には静まり返った明智将兵と共に光秀が書状を握りしめながら座している。   「……如何にされましたか、光秀様。既に斎藤たちは事を起しています。何故に本隊を出陣させないのですか」 「……」 夜襲など一瞬の隙を突く策であり、相手に混乱を鎮める時を与えるなど絶対に避けたい事である。故にいち早く攻めに転じたい秀満は光秀に問いかけるが応えは沈黙として返ってこない。 「おい、誰でもいい。何故に光秀様はこんなに考え込んでいる?状況を説明しろ」 「……秀満様、恐れながら御報告させて頂きます」 苛立つ秀満の言葉と重い雰囲気に堪えきれなくなった明智将兵が恐々と前に出る。 そして視線を泳がせながら震える口を開く。 「今しがた摂津の荒木殿から伝令が来ました……その内容なのですが」 「荒木殿……よもや本願寺が立ち上がったかッ!?」 西の敵といえば、織田家と繋がりを持つ本願寺及びに雑賀衆がついに牙を向いたのかと考えたが、明智将兵はゆっくりと首を横に振って否定する。 「現れた敵は本願寺ではありません……羽柴軍です。それにその数は二万以上、間違えなく本隊です」 「…………羽柴?二万の軍勢……?馬鹿を言うなァッ!!」 そして出てきた名前は羽柴秀吉の名であり、秀満は隠しきれない困惑を見せながら立ち尽くす。羽柴軍は毛利本軍と戦闘を開始したという情報がつい数日前に入ったばかりである筈がなぜに摂津などにいのかと。
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