終わりと始まり

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征夷大将軍の名に於いて信忠は日ノ本の停戦調停を開始した。 まずは東北だが、毎年毎日朝から晩まで親戚同士で戦っている彼らに調停の使者を送る。 この命令に最上家は現在就いている羽州探題に並ぶ官職及びに領土安堵を約束するという条件を提示。 信忠は初めての織田幕府の同調者として寛大に迎え、受諾者には同時に領土安堵を守るというアピールの為に許した。 たがしかし、東北の他の勢力は停戦調停を悉く無視。織田幕府など如何なるものぞと言わんばかりに突っぱねたのである。 そしてあろうことか北条家と手を組み、反織田東北連合を設立。馬鹿みたいに戦っていた者同士が共通の敵を前に結託するのはよくある話だ。 「信忠様、どうやら最上家以外は敵になったようです」 「そうか……うん。そうか」 織田家臣の鎌田新介は信忠に東北連合の旨を伝え、二人は揃って小さく唇を釣り上げる。 「そうか、そうか。想定通りに事が運びこの上ないといったものだな」 「これでまとめて朝敵にできる。いやぁ、よかったですね、これで本能寺の際の報酬の土地を確保できます」 突然の停戦調停に諸侯が反発するなど眼に見えていた。これで後ろめる事をなく東北に兵を送れるというものだ。 ともかく織田幕府には家臣に与える為の土地の類いが不足していた。 一応は明智光秀謀叛を理由に有力家臣の過分な力を削いで少しは土地を確保したが、余計な反発を避けるべく限度というものがある。 故に合法的に外の敵を作り、問答無用に取り潰して土地を確保。我ながら野蛮な考え方ではあるものの、一番合理的な方法である。 そして織田軍は総勢十万の大動員をもって、信忠は北条家の支配する関東に親征を開始した。
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