終わりと始まり

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北条家が当主たる北条氏政は織田軍は十万という軍勢に腹を抱えて笑った。 「ふっはははははッ!!愚かな奴よ織田信忠ッ!!」 十万程度では北条家が誇りし小田原城は陥落しないと確信を持って言う。 何故なら過去にも軍神たる上杉謙信が同じ十万の兵力を使いながらも遂には落とせなかった。 それに十万の規模ともなれば、彼らを食わせる為に一日だけで何れほどの金が掛かるというのか。 また、織田幕府が樹立してまだ日は浅い。そんな彼らをなど烏合の衆でしかないとして高笑いしたのである。 「それに我らには東北の者共とも同盟を組んでいるッ!!敗北などありはせんッ!!」 氏政の高らかな笑い声が小田原城に響いたのだが、この笑い声はすぐに静かになる事となった。 「申し上げますッ!!海からも織田船団が現れ小田原城が完全包囲され申したッ!!」 「……完全に包囲されただとぉ!?他の城はどうしたッ!!まだ一月も経っておらんぞッ!!」 ついに関東・東北連合征伐が開戦したのだが、戦は氏政の想定外の方向に動いていた。 まず一つ、氏政が指摘した兵站問題であるが、織田家には大動員の経験が豊富であるのと圧倒的国力による財政の賜物により難なく乗り越える。 また烏合の衆と卑下していたが、蓋を開ければまったく逆であった。 寧ろ織田軍はもう戦の数は少なくなるだろうと予感しており、最後の最後に取れるだけ功を挙げたいと士気が有頂天に達する。 更に北条軍が籠城している間に東北連合が横っ腹を突くであろうと思っていたが、それも空想の産物として終わる。 関東に送られた織田軍十万は軍団の一つにしか過ぎなかったのだ。同じく十万規模の軍団が東北に攻め行っており、既に壊滅状態にまで陥っていた。
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