#1 鍋を年中おいしく感じる気がしたら負け

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「ほんとに姫って優しいのねぇ…アタシ感心しちゃうわぁ」 そう言いながら鍋の中の肉を食べ続けているコイツはシスター・マリアという。 ちなみにシスター・マリアと名乗っているが、本名は郷田 正十郎(ごうだ せいじゅうろう)だ。 シスターと名乗るからには聖堂女らしく振る舞っているのかと思えば、彼は肉を好んで食べ、酒をこれでもかと飲むいわゆるオッサンとなんら変わりはない。 しかし彼は近隣の住民からとても好かれている。 困っているおばあさんや、泣いている子どもに優しさを振り撒いているお陰かその修道服に似合わない屈強な体と強面も自然と恐がられなくなっていった。 そしてつけられた愛称がマリー。 どうやら本人がそう呼ばせているらしい。 そんな野獣のようなシスターもこれまた俺の部屋の隣、702号室の住人だ。
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