茶トラ猫

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血を連想しそうなほど赤く染まった空を見上げ、なぜか一人、教室で佇んでいた。 開け放たれた窓からは春一番の風が吹き込み、日に焼けたカーテンがパタパタと音を立てて揺れている。 そんな心地の良い音を端で聞きながら、風は私の髪を掻き上げた。 なんだろう……何かを忘れている気がする。 しかしそれが何かは、わからない。 本当に忘れているのか、それともそう思い込んでいるだけなのか。 ただひとつわかることは、私の心の中に広がる空虚さだけ。 私の中で何かがぽっかりと抜け落ちている気がしてならない。 けれどいくら考えようとも、見つからないものは見つからない。 手探りで掴もうとしたところでその何かがわからなければ掴む事も不可能だ。 「……んっ」 両手を高く伸ばし、背筋を張った。同時に体の中に新鮮な空気が送り込まれ、頭の中がすっきりとする。 「とりあえず、帰ろう」 くるりと体を捻り、戸口に向かおうとしたその時、私は目の端で何かを捉えた。
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