12人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーガタガタガタッ!!!
思わず飛び退き、背後にあった机を押しのける。
机の足が擦れ、その音が教室内に轟くが、私の意識は一点に集中していた。
ーー猫が……しゃべった……。
気のせいだろうか。
……いいや、確かに今、言葉を話した。
私の目の前で。私と同じ、私が聞き取れる言葉を……。
「……今、話したのって……君なの?」
恐る恐る確認する。
何かの間違いかもしれない。
いや、きっとそうだろう。
けどーー
「……そうだよ」
はっきりとした言葉で、そう言ったのは紛れも無く目の前に座る、猫だ。
思わず後ろによろけ、背後にあった机のお陰でなんとか踏みとどまった。
「大丈夫!?」
表情からは読み取れないけれど、心配そうな声色で机から机へと軽々飛び越え、私のそばへとやってくる。
「だっ、大丈夫……ちょっと尋常じゃない驚きが、ね……」
ははっ、と力無く笑い、流暢に話す猫を見やる。
「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど……」
同じく乾いた笑い声を上げた。
相変わらず表情からは何も読み取れないけれど。
しかしこれは驚くなんてものじゃない。
むしろ信じ難い。
言葉を話す猫……そんなものが本当に存在するのだろうか。
けれど目の前にそれはいる。
それだけは紛れも無い、事実。
……この猫は一体、なんなのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!