茶トラ猫

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ーーガタガタガタッ!!! 思わず飛び退き、背後にあった机を押しのける。 机の足が擦れ、その音が教室内に轟くが、私の意識は一点に集中していた。 ーー猫が……しゃべった……。 気のせいだろうか。 ……いいや、確かに今、言葉を話した。 私の目の前で。私と同じ、私が聞き取れる言葉を……。 「……今、話したのって……君なの?」 恐る恐る確認する。 何かの間違いかもしれない。 いや、きっとそうだろう。 けどーー 「……そうだよ」 はっきりとした言葉で、そう言ったのは紛れも無く目の前に座る、猫だ。 思わず後ろによろけ、背後にあった机のお陰でなんとか踏みとどまった。 「大丈夫!?」 表情からは読み取れないけれど、心配そうな声色で机から机へと軽々飛び越え、私のそばへとやってくる。 「だっ、大丈夫……ちょっと尋常じゃない驚きが、ね……」 ははっ、と力無く笑い、流暢に話す猫を見やる。 「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど……」 同じく乾いた笑い声を上げた。 相変わらず表情からは何も読み取れないけれど。 しかしこれは驚くなんてものじゃない。 むしろ信じ難い。 言葉を話す猫……そんなものが本当に存在するのだろうか。 けれど目の前にそれはいる。 それだけは紛れも無い、事実。 ……この猫は一体、なんなのだろうか。
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