12人が本棚に入れています
本棚に追加
「君は一体……?」
「それが……僕にもわからない。けど、全ては君……ちゆりちゃんが知ってるはずだよ」
私が知ってる……?
全てを?
一体どういう事?
「自分のことなのにわからないの? それなのに私が知ってるの?」
「そうだよ」
自分で自分のことがわからないなんて、変なの。
それなのに私が知ってるなんてもっと変。
そもそも猫でもない私が何を知ってるというのだろう。
「君はおかしな事を言うんだね」
その言葉に猫の背中は丸まった。
それは多分、肩を竦めた動作なのだろう。
「僕だって、なんで自分の事なのに覚えていないのかわからない。でもひとつだけわかっている事があるんだ」
「わかってる事?」
猫は大きな瞳をゆっくりと、瞬かせる。ピンと生えたひげを揺らしながら口を開いて。
「うん……僕はちゆりちゃんの記憶を取り戻さなくちゃいけないって事をさ」
最初のコメントを投稿しよう!