0人が本棚に入れています
本棚に追加
久しぶりに彼女の夢を見た。あの日の事故以来、何度も見た幼なじみの夢。目の前で車に撥ね飛ばされる玲奈の姿。
原因は、昼間から酒を飲んでいた大学生の飲酒運転。更にスピード違反もしていたらしい車は、玲奈へと衝突した。そのまま数十メートル程飛ばされた玲奈はぴくりとも動かなくなった。車はそれでも止まらず、僕達の前を歩いていた彼女の親友である陽菜ちゃんにも接触はした。幸い、命に関わる大きな怪我はなく、身体検査を受けた後、数日で退院出来た。僕と友人の亮は陽菜ちゃんよりもまだ後ろに居たため、被害を受けずに済んだ。
あれから四ヶ月が過ぎた。最初の一、二週間は彼女の死を受け入れることが出来ず、あの日の事を毎日のように夢で見た。彼女が車に引かれる寸前でいつも目を覚ましては、学校に行けば会えると自分に言い聞かせて休めである学校へと登校する。卒業式を終えてからもそんな毎日を繰り返していた。そんな時、亮が僕の元に来て言った言葉。
「お前だけが、あいつの事を好きだった訳じゃねぇんだ。本当にあいつの事が好きなら、あいつの嫌がるような事はするな」
その言葉で僕は正気に戻る事が出来た。それと同時に、彼の強さも知った。彼も彼女の事が好きだった筈なのに、それでも僕の事を応援し、彼女の死にもしっかりと向き合っている。
ふと、気になって時計を見てみる。時計の針は午前九時を指そうとしている。今日はまだ平日。当然のように学校がある。授業の開始時間は午前九時十五分から。いつもならもう少し早く起きているのだが今日はどうやら目覚ましが仕事しなかったらしい。忙しいで支度しないと学校に間に合わない。
さっきまでの空気が嘘のように慌ただしくなる。ベッドから飛び入りて洗面所へと走り、顔を洗う為に蛇口へと手を伸ばす。そこで自分の顔が目に映った。鏡にはいつもの寝起きよりひどい顔をした自分が映っている。更に汗をかいていて、どうにも気持ちが悪い。だけど、時間がない。一瞬の逡巡ののち、僕は遅刻を選んだ。
最初のコメントを投稿しよう!