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それから四十分後、身支度を終えた僕は学校に着いていた。授業のある教室へと行きそっと後ろから入ると、当たり前だが授業は始まっていた。だが、授業の内容はまだそこまで進んでいないようで、これならまだ追いつける範囲だ。
一安心したところで教室を見回す。すると、後ろ側の真ん中辺りの席にこっちを見ている友人を見つけた。自然とそっちの方へ足が進み隣へと座った。
「よぉ、遅刻。今日は何で遅くなったんだ?」
「まるで、僕がいつも遅刻してるみたいに言わないでよ」
朝から失礼な奴である。友人は悪い悪いと笑い、大きく欠伸をした。
「亮は今日も眠そうだね。昨日は何してたの?」
「バイトだよ」
椅子の背もたれに体を預けぼんやりと黒板を眺める友人からは、疲れてる時のけだる気なオーラが放たれている。
「昨日も夜勤だったの? いつも頑張るね」
「遊びで金使うからな」
遊びの為なら努力を惜しまない。それが彼の考えらしく、寝る間も惜しんでバイトもしている。僕もそれに付き合ってバイトを続けているけれど、次の日が学校の時は深夜帯に入らないようにしている。
隣で亮がまた欠伸をした。今日学校なのは分かっていたはずなのに、よくやるなあと、少し呆れてしまう。そのやる気をもう少し勉強に向けれれば、彼の頭なら学年トップにだってなれるだろうに。
そんなことを考えながら教室内を眺めていると、僕達と同じ列の更に真ん中の辺り。そこにもう一人、友人を見つけた。
僕の視線に気付いた亮は、机に肘をつきながら彼女へと視線を向ける。
「がんばるなあ、陽菜のやつ」
その言葉に僕は、そうだねと同意した。
彼女は中学の頃から勉強熱心で、成績は常に上位に入る真面目な子だ。それは大学に入ってからも変わらず、むしろ中学、高校以上に勉強に熱が入っていた。それが、玲奈の死に関係していることは僕も亮も分かっている。一人、独学で医療の勉強をする彼女を見れば気付かない訳がない。
何か力になれないかと考えて見ても、僕に出来ることは思い付かなかった。亮は「困ったときに、お前が傍にいてやればいいんだ」と言っていたけれど、今はただ見守ることしかできないのが苦しくてつらいのだ。
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