新たな環境の中で

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「バーカ。何やってんの?」 弾はドジを踏んだ私に苦笑し、後頭部を掌でポンッと叩いた。 男の人の大きな掌。 ここ最近男の人とのふれあいが少なくなっていたから、私の頭に触れた彼の手に対して少しだけドキッとさせられてしまう。 元彼の己一と別れてもうすぐ2ヶ月。 その間彼からの連絡は一度もない。 己一に別れ話を切り出した翌日、私は無言のまま彼の家を去った。 合鍵はテーブルの上に置き、彼の家に置きっぱなしだった私物は無理矢理キャリーバッグの中に押し込めて・・・。 まるで家出をするかのように。 私は自分がいた痕跡を彼の家に残すまいと必死になり、己一の家を出た瞬間、自己暗示を掛け偽り続けてきた自分をようやく解放する事ができたのだ。
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