Act.2

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   「あー……えっと、こんばん  は」   遠慮がちに挨拶をされて、  最初はすぐに気付くことがで  きなかった。  「俺のこと解ります?ランチ  食べてた店の、あ!これで解  るかな?」   だが印象的な赤い唇ですぐ  にあの時の青年だと知る。   今まさに思い出していた相  手だっただけに、私は驚いて  反応出来なかっただけなのだ  が、青年は自分の正体が解ら  ないのだと思ってしまったよ  うだ。   昼間はサラサラと揺れてい  た前髪が、今はセットされて  立ち上がっている。白シャツ  に黒エプロンだった服装も、  革ジャンにダメージジーンズ  に変わっていた。  「どう?」   青年は額を手で隠して私の  顔を窺う――おそらくだが、  彼は額を隠すことで前髪があ  る姿を表現したのだろう。   その様子が愛らしく思えて  つい笑みを零してしまう。
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