Act.1

2/7
前へ
/513ページ
次へ
      今年も桜の季節が訪れる。         柔らかな陽射しが眠気を誘  う昼下がり。   いつもの喫茶店のいつもの  席で、私はうとうとと居眠り  をしていたようだ。   意識が薄い中で手元から何  かが滑り落ちていくのを感じ  た――   床に物が落ちた音で、私の  意識は覚醒し始める。   確か本を読んでいたはずだ  が、いつの間に眠ってしまっ  たのだろう?   まだ頭がぼんやりとした状  態だが、落とした物が小説本  であろうとは予測がついた。   拾わなくては……そうは思  っても、なかなか体は動かな  い。   軽く息を吐いてから瞼をう  っすらと開け始めた――
/513ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1907人が本棚に入れています
本棚に追加