Act.3

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   「寒いのかい?」   彼はとろんとした瞳で頷い  た。どうやら眠気と戦ってい  るようだ。   仕方がない――私は着てい  る春物コートを脱いで青年の  肩に掛けてやる。  「牧村さん、やっさしー」   暖を求めた彼は私の背に腕  を回してきた。胸に頬をスリ  寄せられると甘い香りが漂う。  「はいはい、ちゃんとひとり  で帰るんだよ?」   あやすように頭を撫でれば、  彼は私の胸に顔をうずめたま  まで、こくりと頷いた。   空車を見つけて彼を乗せる  と、ドアを閉める前に腕を掴  まれる――  「俺、明日待ってるから。絶  対来て下さいね」   ……彼はとても不安そうに  私を見つめていた。  「あぁ、必ず行くよ」   それで彼が安心するならと  私は必ずと約束し、彼の乗っ  たタクシーを見送った。
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