Act.4

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    ――約束した時に限って何  か起きるものだ。   いつも通り出社した私の元  にトラブルが舞い込んだ。   部下を叱責する暇もなく奔  走し、事が収まった時には午  後三時を回っていた。   運良く昨日の残業で自分の  仕事が一段落していた私は、  後を部下達に任せて会社を出  ることにした。   あの青年がまだいるかは解  らないが、約束を果たすには  行ってみるしかない。   約束を反故にしたくない思  いがそうさせるのか、私は焦  っていた――   それほど遠い距離ではない  が、迷わずタクシーを止める。   運転手に行き先を告げ、そ  の後に続けて『急ぎでお願い  します』と私は口走っていた。   それに応じた運転手は車を  走らせる。   後部座席の背もたれに背中  を預ける――私は自分の言葉  に驚いていた。   無意識に放ったその一言で  私は気付いてしまったのだ。   少しでも早く会いたいと望  む、邪な感情に――
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