Act.1

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   「落としましたよ」   この眼が最初に映したのは、  窓から射し込む春の陽気に照  らされた美顔の青年。   嗚呼、私は夢を見ているの  だろう。   私を見つめる青年の瞳が、  ふと伏せられると、つられて  私の視線も後を追う。   青年が目にしているのは、  彼自身が手に持っている小説  本のようだった。   その本には見慣れたブック  カバーがかかっている。そこ  でようやく私は気付く――  「あの……起きてます?」   再びかけられた声に意識が  完全に覚醒した。動揺を隠し  きれない私の眼は視線を泳が  せたに違いない。   冷静さを取り繕って青年が  拾ってくれた本に手を伸ばす。   桜の木が描かれた美しい風  景のブックカバー――これは  私が長年愛用している品だ。  これを見てようやく夢ではな  いと気付かされたのだ。  「すみません、うとうとして  いました……」
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