Act.4

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    ――カランカランとドアベ  ルが鳴る。マスターに続いて  私が店に入ると、それは目の  前に飛び込んできた。  「いらしゃ――牧村さん!」   来客が私と知ると彼は笑顔  を輝かせ、まるで羽根が生え  たかのような身軽さで私の前  に駆け寄ってきたのだ。  「う……」   彼の周りだけ明るく見える。  桜の花弁が私と彼を包むよう  に舞っている――   やはり私はどうかしてしま  ったようだ。   この瞬間、何もかもがどう  でもよくなってしまったのだ。   桜が舞う光の中で、君が私  に笑いかけている。   それを愛らしいと思うのだ  から、もう観念するしかない。   これは“恋”だ。私は君に  恋をしてしまったのだ――
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