Side.1

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  きっかけはあの人の涙――   叔父貴の店のカウンター席、  その一番奥が俺の定位置。   背の高い観葉植物のおかげ  でフロアの客からは見えにく  いというのが気に入っている。   昔からこの容姿のせいで苦  労をしている。食事の時ぐら  い人目を気にしないでいたい  と思う気持ちは、俺より苦労  している叔父貴に伝わったら  しく、いつの間にか観葉植物  の数が増えていた。   あの日も俺はひっそりと飯  を食っていた――  「少し失礼します」   慌てたような男の声が聞こ  えた。別に興味があったわけ  じゃない。ただなんだろう?  ってそれだけの気持ちで俺は  振り返った――   観葉植物の向こう側で、ス  ーツ姿の男が泣いていた。   ――目が離せなかった。   自覚したのはもう少し後の  ことだけど、俺の“恋”はこ  の瞬間から始まった――
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