春恋桜歌

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   「結構、人いますねー」   遅れてやって来た純平は、  洗い場に座る牧村を見付けて  隣りに座った。  「ん?うん。この辺はわりと  有名な観光地だからね」   宿泊客の殆どは桜狩りが目  的だろうと牧村は続ける。  (桜を見るために温泉旅行…  …優雅な大人の休日的な?俺  の柄じゃないなぁ)   まだまだ花より団子の純平  には分からない感覚のようだ。   体を覆う泡をシャワーで流  し終えた牧村は、体ごと純平  の方を向いて微笑んだ――  「背中、洗ってあげようか?」  「え――あ、はい」   突然の申し出に思わず頷い  てしまう。  「じゃあ、背中向けて」   実のところ……牧村はいつ  も以上にテンションが高い状  態である。
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