春恋桜歌

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   「あ――すまない」   つい力んでしまった指が、  純平の肩に赤い跡を残す――  「平気……」   二人の間に気まずいものと  は違う、微妙な空気が流れ始  めた。   浴室に響く笑い声、そこか  しらから聞こえる水音に、肌  にまとわりつくような白い湯  気……   牧村はずっとテンションが  高い状態が続いているせいか、  理性が働く前に本能によって  突き動かされた――  「ッ!?ま、まきむ――んッ!」  「シッ。声をあげては駄目だ」   突然二の腕を捕まれ引き寄  せられた純平は椅子から滑り  落ちそうになりながらも、そ  の強い腕に支えられ、驚いて  出た声は牧村の手の平によっ  て封じされた。   何事かと確認する暇もなく、  純平の肩には甘い感触が落と  される――
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