1907人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ――うん。ごめん」
噛まれた指を逆の手でさす
りながら、牧村は自分でも驚
いてしまった。その表情を見
て、純平も戸惑ってしまう。
「あの……あとは自分でやる
から……」
「うん……そうだね。その方
がいい」
暴走してしまった自分にシ
ョックで意気消沈してしまい、
牧村は立ち上がると何も言わ
ず歩き出した。
(何てことだ。こんな公共の
場で我を失うなんて、私らし
くないではないかっ)
道徳心からくる猛烈な罪悪
感に頭を掻き乱した。
純平の健康的な肌に出来た
赤い跡――それを自分が付け
たと思ったら、腹の底から湧
き上がった“雄”としての本
能が暴走してしまった。
すぐに消えてしまう指の跡
ではなく、もっと確かに残る
証を……そう強く望んでしま
った上での暴走だった。
最初のコメントを投稿しよう!