春恋桜歌

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    深い溜め息を吐いたその時、  ザブザブと荒い水音が近付き  湯船に波がたつ――   振り返るとすぐそこまで純  平が来ていた。やけに真剣な  顔をしているので、先程のこ  とを怒っているのかと牧村は  不安になる。  「……景色、キレイです」   牧村の隣りまで来て、波が  揺れる中で純平がそう言う。  「え……あー、うん」   来たばかりで景色もろくに  観てない内から言う言葉では  ないが、牧村は頷いた。  「……」  「……」   言葉は続かない。   他の利用客の声が反響して  耳に届く。お湯が流れ落ちる  音が止めどなく聞こえ――  「……!」   牧村は息を呑んで純平の横  顔を見た。
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