春恋桜歌

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    牧村は完全に頭に血が昇っ  ていた。許しが出ていること  も、純平がそのつもりで部屋  戻ることに同意したことも、  牧村にとっては自分を抑える  理由が減ることを意味してい  た。   年を重ねたとはいえ男であ  る。一度火が点けば、熱くな  るのに年齢は関係ないと牧村  自身が証明する。  「はッ……おいで」   深く激しく求められ、純平  は抵抗することも忘れてしま  った。促されるまま牧村の首  に手をかけると、肩に背負う  ように抱き上げられる――   襖を開けると温泉に行って  いる間に敷かれた二人分の布  団が並んでいた。   純平の体重を支えながら布  団の上を歩き、入口より奥の  方が良いだろうと無意識に気  が回る。だが、柔らかい掛け  布団に足を取られてバランス  を崩した――   とっさに庇おうとするも、  純平を下敷きにするように奥  の布団の上に倒れ込む――
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