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夜の静けさの中、日本酒を
舐めながらの花見酒に、二人
はのんびりとした時を過ごす。
「――桜風呂だね」
不意にそう言った純平は、
湯気たつ水面に浮かぶ、桜の
花弁を両手で掬って牧村に見
せた。
「フフッ。そうだね」
合わせた手の隙間から、徐
々に湯が零れて減っていくの
を見つめていると、純平の気
持ちはまた暗くなる。
そしてついには耐えられな
くなった……
「……ごめん……」
暗く、沈んだ一言だった。
牧村もまた、困り顔で優し
く微笑みを浮かべるしかない。
「もういいから。謝ることじ
ゃないだろう?」
お猪口の底に残った酒を煽
り、牧村は気にしていないと
装った。
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