Act.1

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   「君は……店員さん?」   思わずそう尋ねたのには訳  がある。常連と言われる程度  にはこの店に通っているが、  マスター以外の店員を見たこ  とがないのだ。   それについ先日、マスター  と雑談を交わしている際に、  話の流れでバイトは雇わない  と聞いたばかりだった。  「そうですけど……」   私の質問に彼は困惑した様  子を見せる。  「いや、すまない。マスター  はバイトを雇わない主義だと  聞いたことがあったものだか  ら」   私の言い分に納得したのか  青年はまた笑顔を見せてくれ  た。  「あー……ですね。俺、マス  ターの甥っ子なんで、バイト  と言うか手伝い?まぁ、俺か  ら頼み込んで働かせてもらっ  てるんですけどね」   屈託のない笑顔に見惚れて  しまう。なるほど、あの叔父  にこの甥ありと言ったところ  か。
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