春恋桜歌

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   「牧村さんっ」   桧風呂の端まで逃げて、う  なじを手で隠しながら振り返  ると、責めるように睨んだ。   睨まれても牧村は動じない。  「嫌です。言います。君だけ  が可愛いって言わせて下さい」   真剣な顔でそう言われて、  純平は魚のように口をパクパ  クさせた。  「君が好きだよ。つい夢中に  なって痛い思いをさせてしま  うほど、私にだって余裕はな  いんだ。君が可愛くて仕方が  ない。好き過ぎてどうにかな  ってしまいそうだ」  「ま、牧村さん?」  「好きだ。愛している。これ  から先、私から手放す気はひ  と欠片もないから、君もその  つもりでいなさい」  「っ!う、や、やめてよっ!  心臓、心臓壊れちゃうだろ!!」   痛くて苦しくて息が出来な  くて、たまらず叫ぶ。
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