Act.2

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    ――格好つけたのが良くな  かった。   夜の八時に会社を出て、真  っ先に後悔した私は、人の多  い駅前通りを歩いていた。   後悔の理由はただひとつ。  あの時の本を置き忘れてきた  ことだ。   青年から受け取った後、テ  ーブルの上に置いてそのまま  だ。   運が良ければあの青年、も  しくはマスターが気付いて預  かってくれているだろう。運  が悪ければ他の客が持って行  く可能性もある。   悪い方に考えると気分が重  くなった。   本は買い直せば済むが、あ  のブックカバーだけは失いた  くない。私にとってはそれだ  け大切な品なのだ――  「……あっ」   すれ違いざまに小さく驚く  声がしたので、反射的に振り  返り足を止めると、そこにい  たのは――
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