第1章

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僕に白羽の矢が立ったのは、なんのことはない。 親戚中見渡しても僕より暇な奴がいなかったからだ 僕は、大叔母だという人の実家を【調査】することになった。 「岩下の家」と呼ばれていたが、それは姓でも地名でもなく屋号のようなものらしい。 法事や弔事などでも姿を見たことは無く、 「ああ、岩下の家はウチが預かってきてるから、帰りに持っていこう」 と、これも屋号なのだが「ブンヤ」のおじさんが言い出すので返礼品を預けるのが常だった。 ブンヤ、というのは分屋、分家というところから来ているのだと思う。 大叔母は施設に入って、痴呆が進みかけたらしい。 実家のことを気にしているらしい。 家が残っているのか調べて欲しい。 そんな話だった。 ブンヤのおじさんは、自分では無理だと言ったそうだ。 謝礼は二十万。 隣の県に行って廃墟の写真を撮って、近隣の人に話を聞いて。 調査をしたという体裁が整っていれば結果はどうであれいい、と匂わせるような口調だった。 高校生の僕には破格のバイトだった。
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